「とりあえずアプリ作りたい」で起業家が失うお金と時間
「とりあえずアプリ作りたい」——この言葉が招く悲劇
「アイデアはあるんです。あとは作るだけなんです」
起業相談で、この言葉を何度聞いたかわかりません。
そして、この言葉を発した起業家の多くが、半年後にはこう言っています。
「500万円使って、まだ何も形になっていない」 「開発会社に頼んだけど、思っていたものと全然違う」 「1年経ったのに、まだリリースできていない」
「とりあえず作りたい」という曖昧な状態で開発を始めると、ほぼ確実に失敗します。
これは大げさな話ではありません。私が見てきた非エンジニア起業家の7割以上が、最初の開発で何らかの「失敗」を経験しています。
失うのは、お金だけではありません。
時間、機会、そして——起業家としてのモチベーション。
最悪の場合、「やっぱり自分には無理だった」と、挑戦そのものを諦めてしまう人もいます。
でも、本当にそうでしょうか?
失敗の原因は「能力がない」からではありません。「知らなかった」だけです。
この記事では、実際に起こった失敗談をもとに、「とりあえずアプリ作りたい」がなぜ危険なのか、そしてどうすれば失敗を避けられるのかを解説します。
その気持ち、痛いほどわかります
「早く形にしたい」
「アイデアを誰かに先を越される前に」
「投資家に見せられるものが欲しい」
その焦り、よくわかります。
起業家にとって、スピードは命。アイデアを温めている間に、競合が同じことを始めるかもしれない。だから、「とにかく早く作りたい」と思うのは自然なことです。
問題は、その焦りが「準備不足のまま開発を始める」という判断につながることです。
ある起業家は、こう振り返っていました。
「アイデアに自信があった。だから、すぐに開発会社を探した。要件定義?そんなの開発会社がやってくれると思っていた。結果、3回も作り直すことになった」
別の起業家は、こう言っていました。
「周りの起業家がどんどんプロダクトをリリースしているのを見て、焦っていた。自分も早く追いつかなきゃって。でも、結局1年半かかった。最初にもっと考えていれば、半年で済んだのに」
焦る気持ちは、誰にでもあります。
でも、「急がば回れ」は、アプリ開発においては真実なのです。
失敗から学ぶ——本当にあった3つの悲劇
失敗パターンの分析
ここからは、実際に起こった失敗談を紹介します。
どれも、「知っていれば避けられた」失敗ばかりです。
失敗談①:要件定義なしで500万円を失ったAさん
状況: Aさんは、飲食店向けの予約管理アプリを作ろうとしていました。飲食業界での経験が長く、現場の課題を熟知していたため、「これは絶対に売れる」という確信がありました。
何が起きたか: Aさんは、知人から紹介された開発会社に依頼。最初の打ち合わせで、「こういうアプリを作りたい」と口頭で説明しました。
開発会社は「わかりました」と言って、開発をスタート。
3ヶ月後、最初のバージョンが完成。
Aさんは画面を見て、愕然としました。
「全然違う。これじゃない」
そこから修正が始まりましたが、修正のたびに追加費用が発生。最終的に、当初の見積もり300万円が、500万円以上に膨れ上がりました。
しかも、それでも「これじゃない」感は消えなかった。
なぜ失敗したのか:
- 要件定義書を作らなかった:口頭での説明だけでは、認識のズレが必ず生まれる
- 画面イメージを事前に共有しなかった:「完成してから見せる」では遅すぎる
- 開発会社を「丸投げ先」と思っていた:開発会社は「翻訳者」であり、「発明者」ではない
失った金額: 500万円以上 失った時間: 8ヶ月
失敗談②:「全部入り」で1年を失ったBさん
状況: Bさんは、フリーランス向けのプロジェクト管理ツールを開発しようとしていました。自身もフリーランス経験があり、既存ツールへの不満が開発の動機でした。
何が起きたか: Bさんは、「最初から完璧なものを作りたい」と考えていました。
- タスク管理機能
- チャット機能
- ファイル共有機能
- 請求書発行機能
- スケジュール管理機能
- 時間計測機能
「全部必要だから、全部作る」
見積もりは1,200万円。「これくらいなら」と、開発をスタートしました。
しかし、開発は遅れに遅れました。機能が多すぎて、開発会社のリソースが足りなくなったのです。
1年後、やっとベータ版が完成。
しかし、いざユーザーに使ってもらうと、**「タスク管理だけでいいのに、他の機能が邪魔」**という声が多数。
さらに、本当に必要だったのは「見積書作成機能」だったことが判明。しかし、その機能は入っていませんでした。
結局、作った機能の70%は使われなかった。
なぜ失敗したのか:
- MVPの概念を知らなかった:最初から「全部入り」を目指すのは、スタートアップの大罪
- ユーザー検証をしなかった:「自分が欲しい」と「ユーザーが欲しい」は違う
- 「作る」ことが目的になっていた:本当の目的は「課題を解決する」こと
失った金額: 1,200万円 失った時間: 14ヶ月
失敗談③:技術選定を間違えて詰んだCさん
状況: Cさんは、BtoB向けのSaaSを開発しようとしていました。「将来のスケールを考えて、最新の技術で作りたい」と考えていました。
何が起きたか: Cさんは、ネットで調べて「最新のフレームワーク」「流行りの技術スタック」を選びました。開発会社もその技術に詳しいわけではありませんでしたが、「勉強しながらやります」と言ってくれたので、任せることにしました。
3ヶ月後、開発会社から連絡が来ました。
「すみません、この技術では想定していた機能が実現できないことがわかりました。別の技術で作り直す必要があります」
作り直しには、追加で200万円と3ヶ月が必要。
さらに悪いことに、その開発会社は「この技術は対応できない」と撤退。Cさんは、途中まで作ったコードと、次の開発会社を探すという課題を抱えることになりました。
次の開発会社は、こう言いました。
「このコードは引き継げません。ゼロから作り直した方が早いです」
なぜ失敗したのか:
- 技術選定を自分でしようとした:非エンジニアが技術を選ぶのは、素人が薬を処方するようなもの
- 開発会社の「できます」を信じた:「できます」と「得意です」は違う
- 「最新」を選んだ:最新技術は情報が少なく、トラブル時に詰む
失った金額: 350万円(作り直し費用は別途) 失った時間: 6ヶ月(やり直しの時間は別途)
失敗を避けるための5つの鉄則
失敗を避ける5つの鉄則
これらの失敗談から、何を学べるでしょうか?
共通しているのは、**「準備不足」と「知識不足」**です。
以下の5つの鉄則を守れば、同じ失敗を避けられます。
鉄則①:開発前に「要件定義書」を作る
要件定義書とは、「何を作るか」を明確にした設計図です。
これがないまま開発を始めるのは、設計図なしで家を建てるようなもの。必ず「思っていたのと違う」という事態になります。
要件定義書に含めるべき項目:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | このアプリで何を解決するか |
| ターゲットユーザー | 誰のために作るか |
| コア機能 | 絶対に必要な機能(3つ以内) |
| 画面一覧 | どんな画面があるか |
| ユーザーフロー | ユーザーがどう使うか |
| 技術要件 | 対応デバイス、セキュリティ要件など |
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「要件定義書の作り方がわからない」という方も多いでしょう。その場合は、開発を始める前に、技術に詳しい人にレビューしてもらうことをお勧めします。
鉄則②:「MVP」で始める
MVP(Minimum Viable Product)とは、「最小限の機能で価値を検証できるプロダクト」です。
最初から「全部入り」を目指すと、Bさんのように時間とお金を失います。
MVPの考え方:
- 「あったらいい機能」は全て捨てる
- 「これがないと成り立たない機能」だけ残す
- 目安は3機能以内
例:予約管理アプリのMVP
| ❌ 全部入り | ✅ MVP |
|---|---|
| 予約管理、顧客管理、売上分析、メール配信、LINE連携、決済機能、多言語対応 | 予約管理、顧客一覧表示、リマインド通知 |
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「足りないかも」と思うくらいがちょうどいい。足りない機能は、ユーザーからのフィードバックを得てから追加すればいいのです。
鉄則③:技術選定は専門家に任せる
非エンジニアが技術を選ぶのは、危険すぎます。
ネットで「おすすめのフレームワーク」を調べても、それがあなたのプロジェクトに適しているかは別問題。
技術選定で考慮すべき要素:
- プロジェクトの規模と複雑さ
- 将来の拡張性
- 開発会社の得意分野
- 保守・運用のしやすさ
- エンジニア採用のしやすさ(内製化を見据える場合)
これらを総合的に判断するには、技術の知識が必要です。
解決策は2つ:
- 開発会社に技術選定も任せる(ただし、得意な技術を選ばれることに注意)
- 技術顧問(社外CTO)に相談する(中立的な立場でアドバイスをもらえる)
鉄則④:開発会社を「パートナー」として選ぶ
開発会社は「発注先」ではなく、「パートナー」です。
安さだけで選ぶと、Aさんのように「思っていたのと違う」事態になります。
開発会社選びのチェックリスト:
- 同じ業界・領域での開発実績があるか
- 要件定義から一緒に考えてくれるか
- 「できません」と言える会社か(何でも「できます」は危険)
- 開発途中の確認・修正プロセスが明確か
- 保守・運用まで対応できるか
価格だけでなく、「コミュニケーションの質」を重視してください。
鉄則⑤:「作る前」に検証する
アプリを作る前に、アイデアを検証しましょう。
Bさんは、1,200万円かけて作った後で「ユーザーが求めていたものと違う」と気づきました。これは、作る前に検証していれば避けられた失敗です。
検証の方法:
| 方法 | コスト | 時間 | 検証できること |
|---|---|---|---|
| ユーザーインタビュー | 0円〜 | 1-2週間 | 課題の存在、ニーズの強さ |
| ランディングページ | 数万円 | 1-2週間 | 興味・関心の度合い |
| プロトタイプ(Figma等) | 10-50万円 | 2-4週間 | 使い勝手、機能の優先度 |
| ノーコードMVP | 20-100万円 | 1-2ヶ月 | 実際の利用、課金意欲 |
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500万円のアプリを作る前に、50万円で検証する。
この順番を間違えると、大きな損失につながります。
こんな方は、今すぐ立ち止まってください
以下に当てはまる方は、開発を始める前に一度立ち止まることをお勧めします。
- 要件定義書がないまま開発会社を探している
- **「とりあえず見積もりだけ」**と複数社に声をかけている
- 作りたい機能が10個以上ある
- ユーザーインタビューを1人もしていない
- 技術的なことは開発会社に丸投げするつもり
- **「最新の技術で」**と指定している
これらは全て、失敗のサインです。
今ならまだ間に合います。
お金を払う前に、準備を整えましょう。
まとめ:「とりあえず」をやめれば、失敗は避けられる
成功への道筋
この記事で紹介した失敗談は、全て「知っていれば避けられた」ものばかりです。
失敗を避けるための5つの鉄則:
- 開発前に「要件定義書」を作る——認識のズレを防ぐ
- 「MVP」で始める——最小限で検証してから拡張
- 技術選定は専門家に任せる——素人判断は危険
- 開発会社を「パートナー」として選ぶ——安さより相性
- 「作る前」に検証する——作った後で「違った」を防ぐ
これらを守るだけで、失敗のリスクは大幅に下がります。
「でも、自分だけでこれを判断するのは難しい」
そう感じた方もいるかもしれません。
実際、非エンジニアがひとりで全てを判断するのは難しいことです。開発会社に聞いても、自社に有利な提案になりがち。中立的なアドバイスをくれる人がいない。
そんなときに頼りになるのが、**技術顧問(社外CTO)**という存在です。
atelier binary(アトリエ・バイナリ)は、「技術がわからないことで挑戦を諦める非エンジニア起業家をゼロにする」というビジョンのもと、開発の失敗回避、コスト削減、技術選定の相談に対応しています。
開発を始める前の「壁打ち相手」として、お気軽にご活用ください。
「とりあえず」で始めようとしていませんか?
- 要件定義の進め方がわからない
- 開発会社の選び方に自信がない
- 見積もりが適正かわからない
- 技術的な判断ができる人がいない
一つでも当てはまるなら、開発を始める前にご相談ください。
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