外部委託 vs 内製化。システム開発のフェーズ別・最適解チャート
「外注か内製か」——間違った選択が数百万円の損失に
「開発会社に頼むか、エンジニアを雇うか」
この判断を迫られたとき、あなたはどうやって決めますか?
「とりあえず外注しておこう」「今はお金がないから外注で」「いずれ内製化したいけど、まずは外注で始めよう」
多くの非エンジニア起業家が、明確な判断基準を持たないまま、「なんとなく」で開発体制を決めています。
しかし、この判断を間違えると、取り返しのつかない事態になります。
外注で失敗するパターン:
- 500万円かけて作ったシステムが、まったく使えないものだった
- 追加開発のたびに見積もりが膨れ上がり、気づけば当初の3倍のコストに
- 開発会社との契約が終わったら、誰もコードが読めず保守不能に
内製化で失敗するパターン:
- 採用に半年かかり、その間に競合に先を越された
- 高年収でエンジニアを雇ったが、事業フェーズに合わず持て余す
- エンジニアが1年で退職し、また採用からやり直し
「外注か内製か」は、事業フェーズによって正解が変わります。
正解のない中で判断を下し、数百万円を失う。そんな悲劇を、私は何度も見てきました。
あなたの悩み、私も経験しました
「外注か内製か」の判断で悩む気持ち、よくわかります。
私自身、多くの起業家から相談を受けてきました。その中で最も多い悩みが、この開発体制の選択です。
ある創業者はこう語っていました。
「最初は外注でいいと思っていた。でも、追加開発のたびに見積もりが来て、気づけば1年で1,000万円以上使っていた。これならエンジニア1人雇えたのでは、と後悔している」
別の創業者は、正反対の失敗をしていました。
「最初からエンジニアを雇った。でも、MVPを作る段階では彼の能力の20%も使えていなかった。高い給料を払いながら、もったいない使い方をしてしまった」
どちらも、フェーズに合わない選択をしたことが原因です。
問題は、非エンジニアには「今、どのフェーズにいるのか」「このフェーズで何が最適か」がわからないこと。
だから、「なんとなく」で判断して、後悔することになるのです。
フェーズ別・最適解チャートで「正解」が見える
フェーズ別最適解チャート
この記事では、事業フェーズごとの「外注 vs 内製」の最適解を、明確なチャートで解説します。
読み終わる頃には、以下のことがわかります:
- あなたの事業が今どのフェーズにいるかを判断する基準
- 各フェーズで選ぶべき開発体制と、その理由
- フェーズの移行タイミングを見極めるサイン
- よくある失敗パターンと、その回避策
- コスト比較:外注と内製、本当にどちらが安いのか
これさえ読めば、「なんとなく」ではなく、根拠を持って判断できるようになります。
フェーズ1:MVP期(0→1)——外注が正解の理由
MVP期とは
MVP期とは、プロダクトのアイデアを形にする最初の段階です。
- まだ市場で検証されていない
- ユーザーがお金を払うかわからない
- ピボット(方向転換)の可能性が高い
この段階での目標は、**「最小限のコストで、最速で市場に出すこと」**です。
なぜ外注が正解なのか
MVP期に内製化を選ぶと、以下の問題が起こります:
1. 採用に時間がかかりすぎる
優秀なエンジニアの採用には、平均3〜6ヶ月かかります。その間、プロダクト開発は進みません。スタートアップにとって、この時間の損失は致命的です。
2. 固定費が重すぎる
エンジニアを正社員で雇うと、年収600〜1,000万円の固定費が発生します。MVP期は売上がゼロまたは僅少。この固定費を支えるのは、想像以上に大変です。
3. ピボットのリスクがある
MVP期は、プロダクトの方向性が変わる可能性が高い。「やっぱりこっちの機能が必要」「このマーケットは違った」ということが頻繁に起こります。内製化していると、その変化に対応しにくくなります。
MVP期の外注戦略
MVP期に外注する場合、以下の点に注意してください:
| ポイント | 推奨 | 非推奨 |
|---|---|---|
| 契約形態 | 準委任契約(時間単位) | 請負契約(成果物単位) |
| 開発規模 | 小規模(1〜3名体制) | 大規模(5名以上) |
| 期間 | 短期(1〜3ヶ月) | 長期(6ヶ月以上) |
| 技術選定 | 枯れた技術、シンプル構成 | 最新技術、複雑な構成 |
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MVP期の外注コスト目安:
- シンプルなWebアプリ:200〜500万円
- モバイルアプリ(1プラットフォーム):300〜700万円
- 両方含む:500〜1,000万円
MVP期の失敗パターン
失敗①:いきなり大手開発会社に依頼
大手開発会社は、最低発注金額が1,000万円以上のことも。MVP期には過剰な投資です。
失敗②:「将来の拡張性」を考えすぎる
「将来ユーザーが100万人になったときのことを考えて…」という設計は不要。MVPは検証が目的。スケールは検証後に考えましょう。
失敗③:外注先に丸投げ
要件定義から開発、テストまで全て丸投げすると、「思っていたものと違う」という事態が起こりがち。週1回は進捗確認のミーティングを入れましょう。
フェーズ2:グロース期(1→10)——ハイブリッドが正解の理由
ハイブリッド開発体制
グロース期とは
グロース期とは、PMF(Product-Market Fit)を達成し、成長に向けてアクセルを踏む段階です。
- ユーザーがお金を払ってくれることが証明された
- 機能追加や改善の要望が増えている
- 開発速度を上げる必要がある
この段階での目標は、**「開発速度を上げながら、コードの品質を維持すること」**です。
なぜハイブリッドが正解なのか
グロース期に完全外注を続けると、以下の問題が起こります:
1. 開発コストが膨れ上がる
機能追加のたびに見積もりが必要。「この機能を追加すると200万円」「こっちは150万円」…気づけば年間1,500万円以上の開発費に。
2. スピードが出ない
外注先との調整、見積もり、契約…。内製なら1週間でできることが、外注だと1ヶ月かかることも。
3. コードの所有権問題
外注先が書いたコードは、ブラックボックスになりがち。「なぜこう書いてあるのか」がわからず、改修に時間がかかる。
一方、完全内製化も問題があります:
1. 採用難
グロース期のスタートアップは、まだ知名度が低い。優秀なエンジニアを採用するのは困難。
2. 特定スキルの不足
社内エンジニアだけでは、特定の技術領域(インフラ、セキュリティ、AIなど)をカバーできないことも。
グロース期のハイブリッド戦略
コアチームを内製化し、特定領域を外注するのがベストプラクティスです。
内製化すべき領域:
- プロダクトの根幹機能の開発
- 日常的なバグ修正・改善
- コードの保守・運用
- 技術的な意思決定
外注すべき領域:
- 専門性の高い領域(インフラ構築、セキュリティ監査など)
- 一時的に必要な開発リソース(大型機能の追加など)
- 自社にないスキルセットが必要な開発
グロース期の体制例:
| 役割 | 人数 | 内製/外注 |
|---|---|---|
| リードエンジニア | 1名 | 内製 |
| フロントエンドエンジニア | 1〜2名 | 内製 |
| バックエンドエンジニア | 1〜2名 | 内製 |
| インフラエンジニア | 必要時 | 外注 |
| 技術顧問・社外CTO | 月数回 | 外注 |
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グロース期のコスト目安:
- 内製チーム(3〜4名):月額250〜400万円
- 外注(スポット):月額50〜150万円
- 合計:月額300〜550万円(年間3,600〜6,600万円)
グロース期の失敗パターン
失敗①:最初のエンジニア採用を焦る
「早く内製化しなきゃ」と焦って、スキルミスマッチの人材を採用してしまう。最初の1人目は特に重要。採用基準を妥協しないでください。
失敗②:外注を完全にやめる
「内製化したから外注は不要」と考えるのは危険。専門領域や繁忙期のリソースは、外注を活用した方が効率的。
失敗③:採用だけに頼る
エンジニア採用には時間がかかる。採用を進めながら、外注も並行して活用し、開発を止めない工夫が必要です。
フェーズ3:スケール期(10→100)——完全内製化を目指す時期
スケール期とは
スケール期とは、急成長を実現し、組織として拡大する段階です。
- 売上が急拡大している
- 採用も加速している
- 組織としての体制構築が必要
この段階での目標は、**「技術組織を構築し、持続的な開発体制を確立すること」**です。
なぜ完全内製化を目指すのか
スケール期になると、外注のデメリットが顕著になります:
1. コスト効率が逆転する
開発量が増えると、内製の方がコスト効率が良くなります。
| 年間開発費 | 外注(概算) | 内製(概算) |
|---|---|---|
| 小規模(年間500時間) | 500万円 | 800万円 |
| 中規模(年間2,000時間) | 2,000万円 | 1,500万円 |
| 大規模(年間5,000時間) | 5,000万円 | 3,000万円 |
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2. 競争優位の源泉になる
スケール期では、技術力が競争優位の源泉になります。外注依存では、技術的なノウハウが社内に蓄積されません。
3. 採用力が上がる
スケール期になると、会社の知名度も上がり、採用がしやすくなります。この機会を活かして、内製化を進めるべきです。
スケール期の内製化戦略
段階的に内製比率を高めるのがポイントです。
内製化のロードマップ例:
| フェーズ | 内製比率 | 体制 |
|---|---|---|
| スケール初期 | 60% | コアチーム5〜7名 + 外注 |
| スケール中期 | 80% | 開発チーム10〜15名 + スポット外注 |
| スケール後期 | 95% | 開発組織20名以上 + 専門外注のみ |
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内製化で必要な役割:
- CTO / VPoE:技術組織の責任者
- テックリード:技術方針の決定者
- エンジニアリングマネージャー:チームマネジメント
- 各領域のエンジニア:フロント、バック、インフラ、QAなど
スケール期の失敗パターン
失敗①:急激な採用で組織崩壊
「とにかくエンジニアを増やせ」と急激に採用すると、オンボーディングが追いつかず、組織が崩壊します。目安は月1〜2名のペース。
失敗②:技術負債の放置
スケール期は機能追加の圧力が強い。しかし、技術負債を放置すると、後で大きなツケを払うことに。開発時間の20%は技術負債の返済に充てましょう。
失敗③:外注の完全排除
完全内製化を目指すといっても、100%内製にこだわる必要はありません。セキュリティ監査、負荷テスト、特殊技術など、外注が適切な領域はあります。
フェーズ移行のタイミングを見極める
MVP期→グロース期への移行サイン
以下のサインが3つ以上当てはまったら、グロース期への移行を検討してください:
- PMFの兆候がある(リテンション率が安定、NPS高い)
- 月間売上が100万円を超えた
- 開発要望がバックログに溜まっている
- 外注のコミュニケーションコストが負担になっている
- 毎月の外注費が150万円を超えている
グロース期→スケール期への移行サイン
以下のサインが3つ以上当てはまったら、スケール期への移行を検討してください:
- ARR(年間経常収益)が1億円を超えた
- 開発チームが5名を超えた
- 採用応募が安定して入るようになった
- 技術的な差別化が競争優位になっている
- 年間の開発費(外注含む)が5,000万円を超えている
判断に迷ったときの相談先
「外注か内製か」の判断は、事業の成否を左右する重要な意思決定です。
しかし、非エンジニアがひとりで判断するのは難しい。開発会社に聞けば「外注がいい」と言われ、転職エージェントに聞けば「採用がいい」と言われる。中立的な視点が得られません。
こんなときに頼りになるのが、**社外CTO(技術顧問)**という存在です。
社外CTOは、開発を受注する立場にも、人材を紹介する立場にもありません。純粋に、創業者にとって最善の選択を一緒に考えてくれる技術パートナーです。
atelier binaryは、「技術がわからないことで挑戦を諦める非エンジニア起業家をゼロにする」というビジョンのもと、開発体制の判断から技術選定、外注先の選定、内製化支援まで、一貫したサポートを提供しています。
まとめ:フェーズに合った選択が成功の鍵
まとめ:フェーズ別最適解
この記事のポイントをおさらいします。
フェーズ別・最適解チャート
| フェーズ | 最適な体制 | 理由 |
|---|---|---|
| MVP期(0→1) | 外注中心 | 採用リスクを避け、最速で検証 |
| グロース期(1→10) | ハイブリッド | コア内製化 + 専門外注の組み合わせ |
| スケール期(10→100) | 内製中心 | コスト効率と競争優位の確立 |
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各フェーズでの注意点
MVP期:
- 小規模な開発会社・フリーランスを活用
- 将来の拡張性より、検証速度を優先
- 週1回は進捗確認
グロース期:
- 最初のエンジニア採用を妥協しない
- 外注を完全にやめない
- 採用と外注を並行して活用
スケール期:
- 急激な採用を避け、組織を安定させる
- 技術負債の返済を計画的に
- 専門領域は引き続き外注活用
今日からできるアクション
- 自社のフェーズを判断する:この記事の基準で、今どのフェーズにいるか確認
- 現状の開発体制を棚卸しする:外注と内製の比率、コスト、課題を整理
- 次のフェーズを見据えて準備する:移行サインをチェックし、先手を打つ
- 判断に迷ったら相談する:社外CTOなど、中立的な立場の専門家を活用
「外注か内製か」の判断で悩んでいませんか?
開発体制の選択は、一度間違えると数百万円の損失につながります。でも、正しい判断ができれば、コストを削減しながら、開発を加速させることができます。
- 今の開発体制が適切か不安
- 内製化を進めるべきタイミングがわからない
- 外注先の選び方がわからない
- 開発コストが適正か確認したい
こんなお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。